茨城県で農地を売却する手続きと税金のすべて
⚠重要なお知らせ
農地の売却は、一般的な宅地の売却とは大きく異なる複雑な手続きが必要です。農地法による厳格な規制があるため、適切な知識と手続きを理解していないと、売却が困難になったり、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
本記事では、茨城県で農地売却を検討されている方に向けて、必要な手続きから税金の計算方法まで、専門家の視点から詳しく解説いたします。
農地売却の基本知識
農地法による規制の目的
農地は日本の食料安全保障を支える重要な資源として、農地法により厳格に保護されています。この法律は、農地が農業以外の目的で無秩序に転用されることを防ぎ、優良な農地を次世代に継承することを目的としています。
そのため、農地の売却には農業委員会の許可が必要となり、誰でも自由に農地を購入できるわけではありません。
農地売却の2つのパターン
農地の売却方法は、大きく以下の2つに分類されます。
売却方法 | 概要 | 適用される法律 |
---|---|---|
農地のまま売却 | 農業を継続する目的で農地として売却 | 農地法第3条 |
転用して売却 | 農地以外の用途(宅地、駐車場等)に転用して売却 | 農地法第5条 |
農地のまま売却する場合(農地法第3条)

手続きの流れ
農地を農地として売却する場合の手続きは以下の通りです。
1️⃣ 買主の確保
農地取得資格を有する買主を見つける
買主は農業従事者または農業法人である必要2️⃣ 売買契約締結
「農業委員会の許可を条件とする」旨を明記した売買契約を締結
3️⃣ 許可申請
必要書類を揃えて農業委員会に申請
審査期間:約1~2ヶ月4️⃣ 許可後手続き
許可書の交付を受けた後、所有権移転登記を実施
代金決済・物件引き渡し主の資格要件
農地を購入できるのは、以下の要件を満たす者に限定されています。
個人の場合
- 農業に常時従事すること
- 必要な農作業に常時従事すること
- 農地取得後の経営面積が一定規模以上であること(茨城県では原則30a以上)
- 農地の周辺地域に居住していること
法人の場合
- 農業生産法人または農業法人であること
- 役員の過半数が農業に常時従事すること
転用して売却する場合(農地法第5条)
転用許可の要件
農地を農地以外の用途に転用して売却する場合は、より厳格な審査が行われます。
立地基準
茨城県内の農地は、以下のように分類され、それぞれ転用の可否が決まります。
農地区分 | 転用の可否 |
---|---|
農用地区域内農地 | ❌ 原則転用不可 |
甲種農地 | ❌ 原則転用不可 |
第1種農地 | ⚠️ 原則転用不可(例外的に許可される場合あり) |
第2種農地 | ⚠️ 他に適地がない場合に許可 |
第3種農地 | ✅ 原則転用許可 |
一般基準
転用許可の一般基準
- 転用目的が確実に実現される見込みがあること
- 周辺農地への悪影響がないこと
- 農業用用排水施設の機能に支障がないこと
市街化区域と市街化調整区域の違い
市街化区域内の農地
- 農業委員会への届出のみで転用可能
- 手続き費用:約2万円~
- 手続き期間:約2週間
市街化調整区域内の農地
- 都道府県知事(茨城県知事)の許可が必要
- 手続き費用:約10万円~
- 手続き期間:約2~3ヶ月
農地売却にかかる税金
譲渡所得税の基本
農地を売却した場合、譲渡所得に対して所得税と住民税が課税されます。譲渡所得は以下の計算式で求められます。
譲渡所得の計算式
税率の区分
農地の所有期間により税率が異なります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計税率 |
---|---|---|---|---|
5年以内(短期) | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
5年超(長期) | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
特別控除の特例
農地売却には、以下の特別控除が適用される場合があります。
800万円控除
農業委員会のあっせんによる売却
1,500万円控除
土地収用等による売却
5,000万円控除
特定土地区画整理事業等による売却
計算例
設定条件
- 売却価格:3,000万円
- 取得費:500万円(相続により取得、相続時の評価額)
- 譲渡費用:200万円(仲介手数料、測量費等)
- 所有期間:10年(長期譲渡所得)
- 農業委員会あっせんによる売却
計算過程
3,000万円 - 500万円 - 200万円 = 2,300万円
2,300万円 - 800万円 = 1,500万円
1,500万円 × 20.315% = 約305万円
茨城県での農地売却の特徴
地域特性
茨城県は全国有数の農業県であり、農地面積も広大です。そのため、以下の特徴があります。
- 農地の需要が比較的高い:後継者不足の農家から規模拡大を図る農家への農地移動が活発
- 転用需要も存在:つくば市周辺や常磐線沿線では宅地転用の需要が高い
- 価格水準:都市部に比べて農地価格は安価だが、立地により大きく異なる
市町村別の傾向
地域 | 特徴 |
---|---|
県南地域(つくば市周辺) | 宅地転用需要が高く、農地価格も比較的高い |
県央地域(水戸市周辺) | 農業継続と転用のバランスが取れた地域 |
鹿行地域(鹿嶋市、神栖市) | 工業地帯に近く、工業用地転用の可能性 |
県北地域 | 農業継続が中心、価格は比較的安価 |
農地売却を成功させるポイント
1. 早期の情報収集
農地売却は時間がかかるため、売却を検討し始めたら早めに情報収集を開始することが重要です。
2. 専門家への相談
農地法の手続きは複雑なため、以下の専門家への相談をおすすめします。
- 不動産会社:農地取引の実績がある会社
- 行政書士:農地法手続きの専門家
- 税理士:税金計算と節税対策
- 農業委員会:手続きの詳細確認
3. 複数の売却方法の検討
農地のまま売却するか、転用して売却するかにより、価格や手続きが大きく異なります。それぞれのメリット・デメリットを比較検討することが重要です。
4. 適切な価格設定
農地の価格は、以下の要因により決まります。
- 立地条件:駅からの距離、道路付け
- 農地区分:転用の可能性
- 土地の形状・面積:整形地か不整形地か
- 周辺の取引事例:類似物件の成約価格
よくある質問
A1. まず、その農地がどの区域(市街化区域・市街化調整区域)に属するかを確認し、農業委員会で農地区分を調べることから始めてください。その上で、農地のまま売却するか転用するかを検討します。
A2. 農業委員会に相談し、あっせんを依頼することができます。また、農地中間管理機構を通じた貸付も選択肢の一つです。売却が困難な場合は、転用の可能性も検討してみてください。
A3. 農業委員会のあっせんによる売却では800万円の特別控除が適用されます。また、売却時期を調整して長期譲渡所得にすることで税率を下げることも可能です。
まとめ
農地の売却は、農地法による規制や複雑な税制により、一般的な不動産売却よりも専門的な知識が必要です。特に茨城県のような農業県では、地域の特性を理解した上で適切な戦略を立てることが成功の鍵となります。
農地売却をご検討の際は、農地取引の豊富な実績を持つ専門家にご相談いただくことをおすすめします。適切なアドバイスにより、スムーズな売却と税負担の軽減を実現できるでしょう。